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バスタオル ─ なしくずしの死 ─
朕とドーターとボーイはバスタオルを使わない。
もっと言えば、ドーターとボーイは知らないが、朕はバスタオルというものの存在自体を軽蔑している。
当家の浴室内には、常時ビニール製などの小袋が吊るしてある。
入浴する者はおのおの洗顔タオルを1本 (必要であれば2本) 携えて浴室に参入。参入後、件の小袋の中にタオルをしのばせる。
湯あがり。
浴室のドアを開く以前に、小袋より取りいだしたるおのおのの洗顔タオルによって身体の水滴を払拭。温暖な浴室内での払拭により、とりわけ冬季の浴室外にのぞむ際の受難 「ガッデーム! ウインター・ハズ・カーーーム!」 の瞬間においても、朕たちのボディはホット。超然としてホットなのさ。
どうよ? 朕たちのこの叡智。朕たちのこのライフ。
無能力者どもに告ぐ。
なぜ浴室を出てから身体を拭くのか?
果てしもない夜、その夜の果ての極北で、あたかも汝ら自身の死をなしくずしにするがごとき暗澹たるモータルども。
セリーヌか、おのれらは? 寒いじゃないか。
ま。とにかく。
朕はバスタオルを軽蔑する。
あの重苦しさ、厚苦しさ、洗濯しにくさ。
バスタオルの重厚長大、それはすなわち、せっかくお風呂であったまったのに、なしくずしの開扉の果て、おびえながら冷えゆく身体をぬぐうおのれらの、その絶望的な無為、あまりにも巨大な盲目の意匠、とでも言うつもりなのか?
朕は、断固、拒否する。断固、唾棄する。

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